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    2011年3月11日に発生した東日本大震災は巨大地震、津波により1万5894人の方が亡くなり、2561人もの人々がいまだに行方不明(2016年3月10日時点)という甚大なる被害を及ぼしました。更に福島原発の事故が発生しいまだに故郷に帰れない人、また移住先で不当な差別、いじめを合う人もいます。

    3.11から6年・・・現地とは裏腹に時が経つにつれその記憶が風化されていっています。

    しかし、この出来事を再び再認識する映画が公開されました。

    昨年7月29日に公開され、観客動員数520万人、興行収入82.5億円と、昨年公開された実写邦画映画興行収1位に輝き、日本アカデミー賞7冠に輝くなど数々の栄誉の輝いていた「シン・ゴジラ」です。

    この映画を見た人たちが3.11のことを思い出したという方々が多くいました。

    確かにこの映画の随所に3.11を彷彿とさせる演出、描写が散りばめられていました。

    1.政府関係者がリアル

    また、その襲撃の後で、惨状を視察する内閣官房副長官の矢口(長谷川博己)たち政府関係者の模様。 また、柄本明さんが演じた東内閣官房長官が記者会見する際など政府関係者が着ていた服が、3.11の時に政府関係者が生きていた服と同じ服装でありました。

    特に、官房長官の記者会見は、3.11の時の枝野官房長官を思い起こさせる演出でした。

    ちなみに、この記事のために登場人物のデーターを見ているのだが、なんとそれぞれの政府関係者に「選挙区は東京○区」という設定が書き込まれていたことを初めて確認しました。

    そもそも、この映画のテーマに掲げられていたのが「現実対虚構」でした。

    現実は我々の住むこの現実、虚構とはゴジラのことです。

    ゴジラのみがフィクションとなるように、脚本執筆の際、庵野秀明総監督は政府関係者、自衛隊関係者などに徹底した取材を行っています。

    「緊急時に政府はどう対応するのか?」ということを緻密に調べ、更に官邸の中の様子、また早口で会議などで話す政府関係者などは実際にそのように政府関係者がしゃべっているようで、その再現に監督も出演者も総力を尽くした結果あのようなリアルな映画となったのだと思います。

    その取材協力に応じた政治家でクレジットされているのが、枝野幸男氏と小池百合子都知事です。

    枝野氏は官房長官として、3.11の時、震災時対応したというところから、予測不能な事態に対してどう対応するかということを尋ねたのだと思います。

    小池百合子都知事は2007年の安倍第一次内閣の際に防衛大臣を務めています。

    また、ゴジラが東京を襲うということから、首都直下大地震を想定した話もしたのではないかと思います。

    ここまで政治の動きというものをリアルに描いた怪獣映画は過去にありません。

    また、日本映画的に考えても1973年に公開された「日本沈没」くらいではないかと思います。丹波哲郎が総理大臣を演じ、沈みゆく日本列島の中、国民をどう守るかということに対して全力を注ぎます。

    この「日本沈没」と「シン・ゴジラ」がリアルという点では近い印象を持ちます。

    2.群衆がリアル

    今回、映画に登場したエキストラたちには「各々で巨大生物から逃げ惑うリアクションを考えて行動してください。逃げる人、スマホで撮影する人など様々いると思います」と指示を出しています。

    そして、完成した映画で逃げ惑うエキストラ、群衆が、これまでの怪獣映画にはないリアルさを持っています。

    怪獣映画、またウルトラマンも含め、中には笑って逃げてる人もいたりしましたが、今回は、そのようなことをしている人は恐らくいませんでした。

    恐らく、それこそ、3.11を経験した人々だったからだと思います。

    考えてみれば、“何かから逃げる”というこを経験することはそんなにありません。

    いわんやゴジラなどの巨大生物は存在しないため想像が難しいです。

    しかし、ゴジラ約60年の歴史を振り返るとその逃げ惑う群衆にも時代を感じさせるものもあります。

    昭和29年に公開された第一作は戦後9年の映画でした。

    故に空襲の際、B29から逃げ惑った経験がある人たちが大勢いたことであのような恐怖のシーンを演出できたのでしょう。

    時代が経つにつれ、私たちの世代のシリーズである平成ゴジラシリーズは1995年の「ゴジラVSデストロイア」公開前に阪神淡路大震災が発生しましたが、それまではあのような建物が壊れるとか、何から逃げるといった経験を持った人は恐らく少なかったのではないかと思います。

    しかし、今回エキストラに参加した方は、3.11を経験した世代の人たちです。

    また、先ほどの政府関係者の動きと重なりますが、避難の仕方も綿密に趣味レーションされたものだと思います。

    劇中、東京は甚大なる被害を受けましたが、犠牲者は最小限に済みましたが、その理由は

    地下鉄に避難したからです。

    首都直下地震などを想定した避難経路などの防災対策という点もこの映画から学ぶことができるのではないかと思いました。

    3.ゴジラ自体

    ゴジラという存在自体が3.11以降の日本の象徴だったと思います。

    歩く核融合炉ですから、まさに歩く原発。

    放射能をまき散らしながら歩いていきます。

    この映画ではある映画評論家が「3.11、福島という言葉は出てこないけどそのことを思い起こさせる」と語っていましたが、まさにゴジラにそれを託したという庵野秀明ら制作陣の思いを感じます。

    ゴジラだからこそ、その象徴たり得るのだと思います。

    ゴジラは昭和29年に制作された際、ビキニ環礁の水爆実験によって第五福竜丸が死の灰を浴びたことを背景に制作されました。

    日本は、広島、長崎と原水爆の被害に唯一受けた国です。

    第一作の本多猪四郎監督は生前「ゴジラには原爆それ自体の恐怖の象徴と描こうと思っていた」と語っていました。

    故にゴジラに3.11、福島原発以降の日本の社会の鏡としての役割を再び担わせるに至りました。

    ゴジラが暴れるのを見て悲しく感じる、恨むことができないと見た人皆の認識でだと思います。

    第一作の際に、主演の宝田明が初代ゴジラがオキシジェンデストロイヤーで殺されるシーンを試写で見た際「なぜか泣けて仕方なかった。彼も行ってみれば被害者、被爆者なわけですよ。それを殺して白骨化させてしまうなんて。この人間の業というものはどうなんだろうと思うと泣けて仕方なかったんです」という言葉を思い出します。

    ともあれ、福島のある学者は、「これまでの映画で、3.11を最も表現した映画ではベスト」と語っていたように、この映画には3.11以降の日本人の心、またそこから派生する政府の動き、防災のあり方など様々なことを感じることができます。

    シン・ゴジラは3月22日にDVD&Blu-ray発売、レンタル開始しました。

    ぜひ、この作品から様々なことを感じ取っていただけたらと思います。